離婚がきっかけでベトナム移住へ

父と母が離婚すると話しがあったのは、離婚半年前のことです。いよいよこのときが来たなと思い、私も弟もそこまで驚きませんでした。父と母の離婚に伴いすでに就職していた私が母を引き取ろうと思っていたので、母に新しい生活について話をすすめようと考えていました。そのときです。母が「お母さん、ベトナムに帰るね」と言ったのです。
私も弟もびっくりして、「え?なんでいまさらベトナム?」と思ったのは言うまでもありません。確かに母はベトナム人であり、今もベトナム国籍を持っています。離婚後母国に帰るのは不思議なことではありませんが、日本での生活がもうすでに30年を超えていたので、いまさらベトナムに帰るなんてピンとこなかったのです。
私は思わず「生活はどうするの?」とたずねました。母は両親(祖父母)が住んでいた実家が空き家であること、また離婚に備えてちょっとは貯金していることから当面はそれで暮らしていくというのです。
母は「心配ないよ」といいますが、我が家の経済状況から貯金といっても微々たる額であることは予想がつきますし、また母は異国で1人暮らすのは寂しいのでは?といった思いがありました。
いくらベトナム人であっても、母の姉はハノイから車で7時間くらいの郊外に住んでいるし、祖父母も亡くなっています。ハノイに戻っても実質1人なわけです。
弟も母を心配して「母さん、僕就職もするし日本にいなよ」と声をかけました。お母さんは「どうもありがとう。気持ちはうれしいけど、もう1度ベトナムに住みたい。おじいちゃん、おばあちゃんの家に戻る」というのです。
父との生活でつらかったことも多かったと思うので、ベトナムに戻りたいと思うのはしょうがないことかなといった気持ちもありました。
母は弟の大学の卒業式後にベトナムに向かうといっています。私も弟もどうしたらいいのか?と考え、何度か話し合いをしました。父は子供を持つのが遅かったので、年齢的にもどっちかがそばにいたほうがいいのでは?という話になり、弟は父のもとへ私は母のもとへ暮らそうという話になりました。
私は上司に状況を説明し、2月いっぱいで退職する旨伝えました。大学卒業以来お世話になった会社で、周りの人にもとても恵まれていました。できれば結婚後も働いていたかった会社です。しかし母を1人ベトナムに帰すわけにはいかないと思いました。
幸い私はベトナム語が話せることと、ハノイでは日系企業が現地採用の形で求人を出していることから就職についても可能だと考えたわけです。